Vol.2 品確法による性能表示制度の現状

平成11年に品確法が施行されたことにより始まった、新築住宅の性能表示制度(※1)。当社も早くから注目し、取り組んでまいりました。取組みだしたきっかけは、当時、メディア等でひどい欠陥住宅などが多く取り上げられ、エンドユーザーが住宅供給者に対して、不信感を持ち出していると感じたからです。また、以前、私が勤めていた住宅施工会社で現場を見て感じたのは、「欠陥住宅」が作られてしまう原因が小規模ビルダーの法の認識不足で、得てして手を抜いているわけでは無い(中にはモラルの無い業者もいましたが…)と解ったからです。

もちろん、ワザとでは無いからと言え、「欠陥住宅」が許される訳では有りません。ただ、建築基準法は最低限の基準を定めたものであり、そのほかの細かい所を定めたものは公庫仕様書ぐらいしかなく、後は結局、現場の職人の経験や設計者の判断に任せられており、当然それらには個人差が発生するので、住宅の品質にバラつきが出ていたのも事実です。

それらを回避する為などや違法建築を減らす目的で始められたのが行政による中間検査制度。その制度が始まった頃には私は設計業界にいましたので、現在に至るまで数々受験しましたが、この制度により住宅の品質が向上したのも確かです。しかし、この制度も結局は基準法や告示に沿って行っており(当然ですが…)、それらに無い事は、検査員の主観で判断される事が多々有り、私たちを含め、現場の混乱がしばしばありました。

そこで登場した性能表示制度。この制度にはある程度細かなガイドラインがあり、私達が現場に指示し易く、また、細かくランク付けされるのでエンドユーザーにも解りやすい制度です。私はこの制度に期待し、推し進めようと思いました。

今までで代理申請したものも含めると20件ほどこの制度を利用してきました。そこで感じたのは、あまり一般には浸透しておらず、エンドユーザーにビルダーにも認知度が低いということです。何故、この制度が広まらないのか、また、どうやって広めれば良いのかを私なりに考えた結果を述べたいと思います。

まず、この制度は国交省が推進しているにもかかわらず、前述した中間検査制度と互換性が無く、たとえ性能表示の検査に合格しても中間検査に合格しなければならない(もちろんどちらにも費用が発生します)事。

次に、性能評価を取得してもメリットが少ない。確かにエンドユーザーからすれば安心できるというメリットはあるものの、現状の認知度では将来的に中古住宅としての売買時に差別化にならない可能性があります。また、現在での性能評価住宅取得者向けの住宅ローン優遇(その他の優遇では地震保険の優遇ぐらい)では、極一部の地方公共団体が行っている物や民間評価機関が提携している銀行等が行っている物ぐらいしかありません。よって、性能評価取得物件だからと言っても、ほとんど優遇されない場合が出てきます。特に大阪では府自体の財政が逼迫しているのに今後もそちらからの優遇も見込めそうに有りません。さらに各銀行の扱いを見ても、何だかこの制度を使いあぐねているような印象を受けます。

これで、この制度が認知されていくのでしょうか?国の財政も逼迫しているので、国で優遇制度を設けろとは言いませんが、せめて血税を注入した銀行には、もっとこの制度の優遇を要求しても良いのではないでしょうか?私個人としては、この制度が発展していく物だと信じており、また有効な物だと感じていることからも、この現状ではとても不満でなりません。

(※1)簡単に言えば、住宅の通信簿。設計の段階から竣工までを国交省が認定した第3者機関によって審査し、各項目別にランク付けする制度。