Vol.1 常時換気システムの設置義務について

2003年7月建築基準法改正により、シックハウスへの対策の一部として、住宅の居室には常時換気(24時間換気)システムの設置が義務化されました。

そこで私も住宅を設計する者として、色々な資料を元に改正基準法に対応してきました。当初は私も知識不足だったのもあり、各家電メーカーが推奨する方式をそのまま流用しておりました。しかし、分譲住宅等では以前よりコストダウンが叫ばれており、適法範囲で極力安価で出来るようにとの要望が、クライアントより多数あったため、再度、勉強し直しました。しかし、勉強するにつれて、この法の「穴」というべきものが多数存在しているように思えてきました。それも含めての私の意見は以下のとおりです。

まず、関係条文を熟読したところ、常時換気システムの設置義務は記されておりますが、使用義務については触れられていない事。この事は、「使用するもしないも居住者任せ」と取れます。それでは、このシステムを認知していない居住者には利用価値が解らない為、電気代節約等を理由に使用しない方が多数出てくると思われます。しかしながら、もちろん設置されていなければ使用できないのですし、分譲住宅等では直接価格高騰につながるほどのコストも掛からないので、居住者にとっては良い法改正であるとは思います。

私は現在、常時換気システムが設置された集合住宅に住んでおります。そこで「常時換気システム」を使用した事による様々な弊害を発見しました。まず、集合住宅だからということもあるかもしれませんが、排気口と給気口が同一バルコニーに設置されており、風向きによっては排気口から出た空気がバルコニーに滞留し、その空気が給気口から入ってきてしまうということ。また、近隣工場から出される排気、近隣住戸から出される排気、大気中の粉塵、車の排気ガス等も給気口より進入してしまうということです。新築で入居し約2ヶ月ぐらいで給気口の廻りは粉塵や油により、真っ黒になりました。

それらのことは、考慮して設計すれば防げることかもしれません。しかしコストや立地条件によってはどうしても出来ない場合が出てくると思います。そして、多くの住宅供給者は知識不足等によりそういった認識が少ないと思われます。

そういったことを考えると果たしてこの義務は有効なのかに疑問が残ります。しかし、シックハウス症候群に悩まされている方が多数いらっしゃるのも事実です。そこで私が思うのは、新建材から出される有害な物質を「換気」するのではなく、国が有害でない接着剤等の開発に力を注ぎ、新建材メーカーにそれを使用する義務を負わせる等の方が有効な策だと思います。このままでは、常時換気システムを様々な理由で使用しなくて、シックハウス症候群になってしまったら「国はその対策をしてあげているのに、使用しないあなたが悪い」ということになりかねません。これでは、国民の為の法改正ではなく、責任逃れの為の法改正に思えてなりません。

それらのことからも、この改正で喜んでいるのは換気扇メーカーだけで、私一個人としては、この義務は不必要に思えます。

※この法改正により内装建材もF☆☆☆☆(有害物質が極微量なもの)を使用するようになっておりますが、逆に言えば有害物質は極微量ならば使用しても良いとも取れます。